インスタント作品⑮「二羽とり」


煙草を吸おうと軒下でぼんやりとしていた時だった。
なにやら、こつこつと音がするので周囲を見渡してみると庭木の所に、ニワトリがいた。
二羽。
カラスとは違い野生ではあるはずなく、どこから来たのだろうと思った。
二羽はつかず離れずで、ちょこちょこと動き回っており、ひたすら口に運んでいた。
くわくわと微かに鳴いており可愛く感じた。
何を食べているのだろうと、目を細めてみても自分の目には何も見えなかった。
煙草を吸い終わったので、家の中に入ろうとした。
ニワトリは、いまだこつこつとつついて何かを食べていた。
後日の散歩中、ちょうどお隣の主人とでくわしたので、ニワトリのことについての会話をした。
どうやら、お隣のニワトリらしく最近飼い始めケージの中だけだとかわいそうだからと外に放しているらしい。
名前は付けているのかと問うと何やら、不思議そうな顔をして「つけていない」と言った。
なので、自分の中でつけてあげようと思った。
名前を「ヤナセ」と「トナリ」にした。
ヤナセ 今日もあの家に行ってやるわよ。
トナリ だわよ、だわよ。
ヤナセ 不法侵入だ!
トナリ だわよ、だわよ。
ヤナセ 今日も、この辺りで頂くわよ。
トナリ だわよ、だわよ。
ヤナセ わたしたちは、土を食べるわよ。ここの土の方が美味しいわよ。
トナリ なんでも食べるわよ。砂利も食べるわよ。
ヤナセ むっ! あそこにみすぼらしい人がいるわよ。
トナリ ここに住んでいる人よ!
ヤナセ 何か見ているわよ。
トナリ いやらしい顔で見てるわよ。
ヤナセ 何やら近づいてきてるわよ!
トナリ だわよ、だわよ。
ヤナセ 逃げるわよ!
トナリ だわよ、だわよ。
と、ニワトリを手に持ってみようと思ったが、逃げられて遠慮がちになり捕まえられなかった。
近くでじっくりと見た。
つぶらかな瞳に、まんまるとした体つきに可愛さを覚えた。
鳥の足は、木の枝を思わせるように細く細部は小さい模様がびっしりと埋め込まれているようだった。
その間にも、こーこーと鳴いていて愛らしかった。
ニワトリは愛らしい。
卵も産む。
普段は、食しており、感謝している生き物だが、こうしてせっせと動いているニワトリを見ると犬や猫となんら変わりないなと思った。
そう思った。
生き物というものは、身近に感じるだけでなんとなく良いものだと思うものだ。
そうして、晩御飯の照り焼きチキンを食べた。

2026年6月20日 牛島好英(jimayosh)